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東京高等裁判所 昭和47年(ネ)348号 判決 1972年11月28日

控訴人 同栄信用金庫

右代表者代表理事 笠原慶蔵

右訴訟代理人弁護士 山崎保一

同 中野博保

被控訴人 国

右代表者法務大臣 郡祐一

右指定代理人 篠原一幸

<ほか三名>

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張および証拠の関係≪省略≫

理由

当裁判所の判断は、次のとおり訂正附加するほか原判決の理由に説明するところと同じであるからこれを引用する。

一、原判決六枚目裏六行目「配当手続が実施され」の次に「昭和四四年七月二五日の配当期日において別紙交付金計算表B欄のとおり本件不動産売却代金の交付があり」を加え、同七枚目表一行目「その成立に争いない……」から同五行目「交付があったこと」までを削り、同一一行目から同枚目裏一行目にかけて「認めて争わないところである。」を「明かに争わないところである。」に改め、同枚目裏九行目「被告」を「原告」と改める。

二、原判決九枚目表六行目と七行目との間に次のように加える。

「競売法第三三条により競売代金を交付する行為は実体上の権利を確定するものではないから、その代金の配当を受ける権利のない者が配当を受け、そのため正当に配当を受くべき者が配当を受け得なかった場合においては、前者は後者に対し民法第七〇三条により不当利得返還の責に任ずべく、この場合において配当を受けなかった者が右配当に関し異議を述べたかどうかは右不当利得返還の権利主張になんらの消長を来すものではないと解する(昭和一六年一二月五日大審院判決)。そして、抵当権実行による競売手続において、裁判所が配当を誤り配当すべからざる者に配当をしてしまった場合に強制競売におけるように配当表に対し異議の訴訟を提起し得るかについては学説上争いの存するところであり、大審院はこれを消極に解していたが、最高裁判所はこれを積極に解し、抵当権の実行による不動産競売手続において配当表が作成された場合、異議のある抵当権者は、抵当権者相互の抵当権の存否、順位、被担保債権の範囲並びに競売手続において配当を受くべき金額等を主張して配当表に対する異議の訴を提起し得るものと解するを相当とした(昭和三一年一一月三〇日)。しかし、この判決は、配当表異議の訴によってもよいというだけで不当利得返還の訴を許さぬ趣旨でないことは判文を見れば明らかであり、また強制執行法上の配当表異議に関する訴訟手続の規定を全面的に準用しようとする趣旨とは解せられないから民事訴訟法第六三四条の準用はなく、従って不当利得返還請求をなし得る者は必ずしも配当表に対して異議を申立てた者たるを要しないと解すべきである。」

よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 菅野啓蔵 裁判官 渡辺忠之 小池二八)

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